市原リウマチ研究所
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  2006年05月号
日本医事新報掲載  
 
   
   
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“膠原病診療におけるピットホール ―知っておきたい基礎知識”
≪トピックス≫24. 膠原病診療におけるクリニカルパス(2006年5月号)
 
  聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科
岡  寛*、尾崎 承一**
*Hiroshi Oka, 講師、 **Shoichi Ozaki, 教授
 
  要旨
  • クリニカルパス(CP)は、診療の適正化、標準化、チーム医療の強化に役立つ。
  • 関節リウマチ(RA)では、早期の治療が重要であるため、1週間の教育入院のCPを活用している。
  • シェーグレン症候群(SjS)のCPでは、診断の確定と腺外症状の有無の検索が必要である。
  • 全身性エリテマトーデス(SLE)のCPには、生活指導(紫外線の暴露)、服薬指導(ステロイド、免疫抑制剤)が重要である。
  • 多発性筋炎/皮膚筋炎の初回CPでは、肺繊維症、悪性腫瘍、心病変のスクリーニングが必須である。
  • 強皮症(SSc)/混合結合組織病(MCTD)のCPでは、肺高血圧症のスクリーニングを入れる。

(1)クリニカルパス(CP)作成の意義
近年、医療現場の各方面で、クリニカルパス(CP)の作成が推奨されている。CPの作成は、不必要な検査が除かれ、逆に必要な検査、指導が網羅されるという医療の適正化、標準化に大きく貢献するものである。またCPは、医師、看護師、薬剤師、理学療法師などの全ての医療スタッフの共同作業で作成されるため、チーム医療の強固につながる。さらに作成したCPを吟味して、より良いCPに基づく医療を実践することも可能である。本稿では、当教室で実際運用されているCPと、今後進められる膠原病領域のCPを紹介する。

(2)RAの教育入院(リウマチドック)のCP
RAの初期において、正しい疾患の理解と前向きな治療体制が予後の改善をもたらすことが示されている(1)。当科では、初期のRA患者を中心に、1週間の教育入院(リウマチドックと名称)のCPを作成し、実践している(表1)。このCPの特徴は、リウマチ専門医からの講義指導、看護師からの生活指導、理学療法師からのリハビリ指導、薬剤師からの服薬指導、心理療法師からの面接に基づくアドバイスが網羅されている。

(3)SjSのCP
表2にSjSのCPを示す。SjSでは、まず診断面を確実にすることが必要である。ドライアイの診断にシャーマーテスト、蛍光色素試験(フルオルセン染色)を行っている。ローズベンガル試験は、患者の疼痛が強く、推奨されない。ドライマウスの診断では、サクソンテストと唾液腺シンチグラフィーを組み合わせている。ガムテストは、泡の混入で正確性を欠くため、当科では施行していない。他に抗体検査(抗SS-A抗体、抗SS-B抗体)を行い、必要に応じて口唇小唾液腺生検(Lip biopsy)を行っている。SjSの診断が確定したのち、症状に対応した治療を選択する。また、腺外症状として、間質性肺炎、細気管支炎、悪性腫瘍(特に悪性リンパ種)、末梢神経症、腎障害、ミオパチーなどの有無も検索する。

(4)SLEのCP
表3にSLEのCPを示す。本症は、発症前から光線過敏症があり、紫外線の暴露によって再燃することが多く、厳密な生活指導が必要である。また、性ホルモンの関与も明らかになっており、安定期以外では避妊指導を行う。治療面では、長期のステロイド内服が必要であり、決して自己中止しないように指導する。また、難治性の中枢神経障害や、腎障害には、シクロフォスファミド(エンドキサン)を使用するが、生殖器に与える影響が大きいため、治療開始前に十分なインフォームドコンセントが必要である。日和見感染症の対策としては、アンフォテリシンB希釈液によるうがいや、バクトラミンの予防内服を行う。

(5)PM/DMのCP
表4にPM/DMのCPを示す。PM/DMでは、予後決定因子の間質性肺炎、悪性腫瘍、心病変の3つについての検査が必要である。まず、間質性肺炎は、特に抗Jo-1抗体陰性で筋炎症状の軽い皮膚筋炎では、急速に進行することがあり、注意を要する。悪性腫瘍の検索では、血清の腫瘍マーカーに頼ることなく、ガリウムシンチグラフィーや、PETによるスクリーニングが効果的である。特にPETは、スクリーニングとしては非保険適応であるが、1cm以下の微小癌でも検出が可能である。高齢者、皮膚筋炎、光線過敏症のあるものなどでは、悪性腫瘍のリスクが高く、これらの検査も考慮すべき検査である。心筋障害は、高頻度ではないが、重要な予後の決定因子であるため、頻脈や不整脈を認める症例では、血清トロポニンT、心臓超音波検査、心筋シンチグラフィーなどの詳しい検査が必要である。

(6)SScのCP
表5にSSc/MCTDのCPを示す。MCTDでは、ほぼ全例がレイノー現象を認めるため、冬期では、徹底した保温を指導する。抗Scl-70抗体陽性例は、皮膚硬化、間質性肺炎の進行が早いため、定期的な呼吸機能検査と、胸部CTによる経過観察は必要である。抗セントロメア抗体陽性例では、皮膚硬化は限局型が多いが、逆流性食堂炎の合併が多く、積極的な内視鏡検査を行い、内服薬としては、プロトンポンプインヒビター(PPI)の長期内服の対象となる。また、頻度は低いが、肺高血圧症の合併も知られている。肺高血圧は、早期に治療開始しないと、極めて予後が不良であるため、強皮症や混合結合組織病では、全例に心蔵のドップラーエコーによる肺高血圧の有無をスクリーニングすることが望ましい。

まとめ
膠原病全体として、ストレス、感染、外傷、性ホルモンの関与が考えられるため、平素からの生活指導が肝要である、また、抗SS-A抗体や抗DNA抗体陽性例は、紫外線の暴露を避けることが必要である。各疾患の予後を左右する因子を正確に把握して、経過観察することが望まれる。

参考文献

1) Sokka T.Work disability in early rheumatoid arthritis. Clin Exp Rheum 21:71,2003.

2)岡 寛、尾崎 承一。関節リウマチの治療。薬物療法―クリニカルパス。日本臨床:63(1),584.2005.


(表1)リウマチドックCP
(表2)SjSのCP
(表3)SLEのCP
(表4)多発性筋炎/皮膚筋炎のCP
(表5)強皮症/混合結合組織病のCP

 
   
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